からだの成長・発育にかかわる「甲状腺」 その1

はじめまして。加美病院院長の土井秀之です。

私は、東北大学病院勤務中、肝臓・腎臓移植に従事し、また、甲状腺外来治療や甲状腺手術を行ってきました。

甲状腺は甲状腺ホルモンをつくる臓器で、成長や発育を促進し、代謝を亢進(こうしん)させ、からだの栄養や水分の利用に影響を与える働きをしています。甲状腺の病気は、検診者100人中10〜15人にみられ、「働きが異常となる場合」、「炎症」、「腫瘍」の3つに分類されます。

そこで今回は「働きが異常となる場合」についてお話しします。

甲状腺の働きが異常となる場合

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)などでホルモンが多くなると、全身が興奮状態となり、イライラしたり心臓がドキドキしたり、心身共に消耗します。また半数ほどに目が飛び出す症状が見られます。

反対にホルモンが不足すると甲状腺機能低下症となります。心身の活動が鈍くなり意欲がなくなったり、疲れや物忘れ、皮膚の乾燥、全身のむくみなどの症状や、ひどい場合は心不全状態となります。

これらの病気は、病院で見つかるほか、首のはれでわかる場合もあります。

バセドウ病の治療は、まず薬で増えすぎた甲状腺ホルモンを抑える治療を始めます。特に、妊娠中の甲状腺機能亢進症は、妊娠経過に悪影響を与えるため治療しなければなりません。

その他の治療法としては、手術療法と放射線療法があります。放射線治療の良い点は、全身麻酔や手術のような負担がなく、繰り返し行えることや、入院せず外来でできる場合もあることです。

甲状腺機能低下症は、ホルモンの補充で良くなります。薬の副作用報告もなく、飲み合わせや発ガンの心配もありません。(つづく)